おとう、おっかあ。
りんはこんなに大きくなりました。
そして今、りんは殺生丸さまと一緒にいます。

りんがいい子になるように、幸せになるようにと、それだけを願ってくれたおとうとおっかあ。
もしかしたら人間じゃない殺生丸さまと一緒にいるりんはふたりが望んだ幸せとは違うかもしれない。
でもね、殺生丸さまはとっても優しくて、りんをうんと大切にしてくれてる。
りんはそんな殺生丸さまが大好きなの。
――だから悲しまないで。

いい子かどうかは……邪見さまに聞いてみて。
小さい頃と変わらずお小言いっぱいもらってるけど、邪見さまもりんを大切にしてくれる。
大好きよ。

おとう、おっかあ……。
ここへ来るのは今日が最後です。
ううん、これはりんが決めたこと。
りんも大人になって、人と妖の間にある大きな隔たりを知りました。
人の子が妖の世界へ行くのは許されないことも知りました。
りんのせいでこれ以上おとうとおっかあが悲しむのは嫌です。
あの娘は神隠しにあった、村ではそう言われてるから、このまま行きます。

このお花を置いていきます。綺麗でしょう?
これは殺生丸さまのお屋敷に咲いてたお花でずっと枯れないのよ。
これをりんだと思ってね。
――そして
許してくれるなら、ずっとずっとおとうとおっかあの娘でいさせてください。

いつの間にか殺生丸さまと過ごした季節は、おとうやおっかあたちと過ごした季節を越えようとしています。みんなと一緒に暮らした時間は短かったけど、りんは幸せだったよ。

おとう、おっかあ。
明日、りんは殺生丸さまのもとに嫁ぎます。